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自殺と「うつ」とアルコールと

今日は少し重い話題です。

コロナ禍のなかで、意外な人たちの自殺が相次いで報じられて、動揺なさっているかたも多いのではないでしょうか。
まだまだお若いかたがたが、なんともったいないことでしょう。

もしかしたらこれは氷山の一角で、実はもっと多くのかたが自ら命を絶っているのかもしれないと心配にもなります。

コロナの社会状況も背景にあることは無視できないと思います。
何しろいつこの不自由な状況が終わるのか先が見えない。
景気は悪くなるし、仕事はなくなる。
人と人との関係も遠くなってきたし、会ってもどこか疑心暗鬼。
世界中で流行しているので、逃げ場もない。
今まで楽しみにしていたことも、できないことになってしまったし、できたとしてもリスクを伴う。

先の見通しがまったく立たないということは、閉塞感という言葉そのものです。
この状況では、どの方向に進んだらいいのかまったくわかりません。
そんな中で「うつ病」「うつ状態」になっているかたも多いことと思います。

死にたいという欲望は、「うつ」のときに生まれてきます。
しかし人としてこれだけはしてはいけないと、皆必死に踏みとどまるのだと思います。

家族や友人を自殺で失うということほど、残された人にとってきついことはありません。
「もしかしたら救えたのではないか」と、罪悪感を抱えたままずっと生きることになります。

さて、「うつ」と自殺も関係がありますが、アルコールと自殺も強い関係があります。
人はうつ的になると、気分をあげるために飲酒します。
アルコールが気持ちを緩め、現在の苦しみを忘れさせてくれるからです。
あるいは睡眠薬がわりにアルコールを飲む人もいます。

けれど実は、アルコールを飲むよりも、信頼できる医師に処方してもらう抗不安薬や抗うつ剤、睡眠導入剤のほうがよほど安全なのです。
受診してきちんと処方してもらい、治ったら(医師の指導の下に)薬をやめればいい。

アルコールを気分高揚のために飲み続けていると、依存症になる危険が増し、またうつ状態になる場合もあります。
それだけでなく、アルコールを飲み続けていると癌になる確率がふえ、脳細胞が死んで痴呆になり、長い期間飲み続けていると、性格が偏狭になってきます。
感情の抑制がきかなくなり、激高しやすくなったり、嫉妬妄想が出てきたりします。

そしてうつ状態を和らげようと飲んでいる場合、お酒の影響下で衝動性が増して、突然自殺してしまうという悲劇が起こります。

ですから「うつ的」になったときには、むしろお酒をやめて、精神科・心療内科に相談してお薬を処方してもらい、ゆっくりと休むほうがいいのです。(重篤なら入院という選択もありだと思います)
うつ的なときには、すべてが悪い方向に行くような錯覚が生まれてきます。
けれどあとで考えてみると、現実はそれほど悪い方向に行っていないことのほうが多い。

何よりも「うつ病」は、必ず治るのです。
それがこの病気の自然の経過です。

うつ病を経験した人のこんな言葉があります。
「患者には永遠に続くように感じられても、実際には、嵐と同じようにうつ病の勢いも必ず衰えるときがくる」(ウィリアム・スタイロン)

かなり苦しいけれど待っていれば、苦しみが嘘だったように気持ちが晴れ晴れする時がくるのです。

同じように、このコロナ禍も、やがては過去の話になることでしょう。
これまで培ってきた人類の能力と叡智に期待したいと思います。
あるいは自然の経過でウィルス自体が消滅に向かうかもしれません。

苦しい時期が永遠に続くはずはない。
今は見えていないだけですが、この世界には美しいことや楽しいことが溢れているはず。
明けない夜はないのです。

あき2

感覚を磨く


画家の篠田桃紅さんというかたをご存知でしょうか?
彼女は墨絵作家で、現在107歳。まだ作品を描いていらっしゃるとか・・。

そのかたの本のなかにこんな言葉がありました。
「感覚は、自分で磨かないと得られません。絵画を鑑賞するときには、解説は忘れて、絵画が発しているオーラそのものを、自分の感覚の一切で包み込み、受け止めるようにします。このようにして、感覚は、自分で磨けば磨くほど、そのものの真価を深く理解できるようになります。(中略)虫が知らせる、虫が好かない、という表現がありますが、虫というのは感覚。自分のなかに虫がいて、それが非常に感覚的に優れていたから、虫にたとえた言い方をしていました。世の中の風潮は、頭で学習することが主体で、自分の感覚を磨く、ということはなおざりにされています。たいへん惜しいことです」(「103歳になってわかったことー―ー人生は一人でも面白い」篠田桃紅)

私も、知らず知らずのうちに、論理と言葉に頼ってしまう傾向があると自覚しています。

論理と言葉に偏ってくると、目に見えるもの、聞こえること、味わうもの・・・なんでも言葉にしてしまう。
そうすると、その言葉ですくいとれない部分のものは、置き去りにされたままになってしまう。
つまり全体を感じ取れていないということです。

けれどあわただしい時間のなかで、つい言葉で全部をつかんだような気になる。
それで急いで前に進んでしまう。
その言葉の粗さに気づいていない。
そんなことが現代ではたくさん起こっているような気がします。

精神療法家のなかには、相手を一目見ただけで、その人のなかの「どこが」病んでいるのかわかってしまうと言う達人もいます。
経験のなかで、感性が最高度に磨かれ、知識とむすびついた直観が働くのでしょう。
そういうことは、実際にあると思います。

私たちが「言葉」や「論理」に頼ってしまいがちなのは、どこかで「感覚」を怖がっているのかもしれません。
何かを感じることによって、心にダメージを受ける体験をしてしまうと、感じることが怖くなり、感じること自体に門戸を閉ざしてしまう。
そして、言葉や論理で武装するのです。

けれど、すべての感覚が自分を傷つけるわけではない。

むしろ、私たちを癒してくれる感覚もたくさんあります。
美しい音楽や絵画。アロマの香り、美味しい料理、ペットの手触り。
そんなものを、ただ心地よく味わう。

「目的」とか「目標」とか「努力」とか、そんなものから少し離れて、自分の感性を解放できたら、今まで気づかなかったものが見えてくるかもしれない。

コロナで社会の動きがスローになっている今だからこそ、味わえるものがあるような気もします。

blue

T.H氏撮影

脳もDNAも変化する

前回のブログで、日本人の脳にはセロトニンが少ないなど、遺伝的な要素を書いたところ、がっかりなさったかたもいたようです。
これだけの情報で終わるというのも無責任なので、いろいろな書物からの寄せ集めですが、脳内物質や遺伝子の変化について、書いてみます。

前回書いたように、日本人には幸福ホルモンと言われるセロトニンの分泌量が少ない。
けれど、セロトニンを日常的に増やす方法は、ネットで検索すればいくらでも出てきます。

セロトニンを増やす方法として、こんなものがあげられています。
*太陽の光を浴びる。一日15分から30分でいい。
*十分な睡眠をとる。
*適度な運動をする。特にリズミカルなものがいい。(ウォーキング、ランニング、ダンスなど)
*セロトニンの材料となるたんぱく質をとる。

また遺伝子自体の働きも、変化させることが可能という話もあります。

私たちの身体には約60兆個の細胞があり、その一つ一つに同じ遺伝情報(ゲノム)が含まれている。
細胞の遺伝子(DNA)に含まれる遺伝情報は30億個。全細胞は皆同じ遺伝情報を持っているのだそうです。
そして人には約2万個の遺伝子があります。

ところが身体の細胞ごとに、その役割は違ってきます。
同じ遺伝子を持っていながら、筋肉の細胞と髪の細胞とでははまったく違う働きをしている。
その違いは、細胞の中の遺伝子がオンになったりオフになったりすることで生まれてくるようになっているのだそうです。
人体というのはこういう複雑な設計図で動いているのですね。
すごいことです。

で、もっとすごいのは、この遺伝子のオン・オフを操作することで病気を治すという技術がもう実用化されつつあるということです。
すでに「遺伝子組み換え技術」は実用化されているのですが、遺伝子自体を変えることなくこのオン・オフを切り換えることで病気を治すのだそうです。
つまり例をあげれば、オフになっている「癌抑制遺伝子」をオンにすることで、癌の悪化を食い止めたりするということです。

このオン・オフを調節する人体のしくみをエピゲノムと言い、この技術はエピゲノム編集と言われます。
ここまでのことを解明し実際に応用できるまでにした人間の知力もたいしたものです。
言ってみればこれも、人間の持っている遺伝子のおかげですけれどね。
(このエピゲノム編集の詳細は「Newton 2018年8月号」に掲載されています)

さてその人がもともと持って生まれた遺伝子のオン・オフの情報は、実はその人が生きていく環境、栄養状態、ストレスなどによって変わってくるのだそうです。
そうです。遺伝子も変化するのです。

そういう要素で遺伝子が変化するのであれば、眠っていた良い遺伝子を、オンにして目覚めさせることも可能。
そんな趣旨の本を書いているのが、遺伝学者・村上和雄氏です。
「生命の暗号」などの本で有名ですね。
人間は、本来の可能性のほんの一部しか使っていないそうです。
村上氏が提唱する眠っている良い遺伝子をオンにする方法は、基本、ポジティブシンキングのようですが、それは著書をお読みになってみてください。

けれど、環境、栄養、ストレスでオン・オフが変化するのなら、良い環境、十分な栄養、ストレスを減らすことが良い変化を呼ぶのだと推測されます。

また村上氏は、これだけの壮大で精緻な生命体の構造を目の当たりにすると、何か「サムシング・グレート」のような存在を考えざるを得ないと言っています。
この「サムシング・グレート」は、宗教で言う「神」であり、森田療法で言う「自然」なのかもしれません。

興味にまかせて書きましたが、まだまだ世の中には知って面白いことがたくさんあります。
巣ごもりの期間は、知的興味を充たす時間としても使えそう。

それにしてもこれほどの知力を持った人間が、なぜコロナウィルスに、ここまで手こずっているんでしょう!


夏

T・H氏撮影


注・この記事は鬱病や神経症の治癒について書いたものではありません。

脳と天災

令和2年7月豪雨災害に遭われたかた、お見舞い申し上げます。
まだまだ雨が降り続いている様子、お気をつけてお過ごしください。

タイトルの「天災」は、「天才」の誤字ではありません。
天災と脳とは関係があるかもしれないという話です。

新しく設けられた公認心理士試験のための講習会を受けた時、講師の精神科医のかたが、人体のなかで「脳」は未だに「暗黒大陸」だということをおっしゃいました。

つまり、人体の他の部分のことはかなり解明されているし、それにともなって病気の治療法も進歩しているが、人間の「脳」の機能は解明が難しく、脳に起因する病気もなかなか治療がむずかしい、ということでした。

だからでしょうか、「脳」科学に関する読み物はたくさん出版されています。
未知の領域、脳のことをもっと知りたいという気持ちがあるのでしょうね。

そのなかで興味を惹かれたのが、日本人の脳の特質の話。
これは中野信子氏の著書で知りました。ごく易しい脳科学のトリビアを書いた本です。
(「脳はどこまでコントロールできるか」ベスト新書)

この本のなかに出てくる話。
人が新鮮な刺激を好むかどうかは、ドーパミン受容体のタイプ4(DRD4)に関係しているのだそうです。この受容体の配列の繰り返し回数が多いと新しいもの好きになります。日本人ではこの繰り返しタイプが2回~4回の人が圧倒的に多いのですが、欧米人は7回の人が多い。つまり日本人は、おだやかな現状維持の生活を好む人が多く、欧米人は失敗しても新しいものを求めて挑戦する人が多い。これは、このDRD4の特質のせいではないかということです。

そしてまた、日本人はセロトニントランスポーターの数が少ないタイプが65%、多いタイプが3%ですが、米国の人は少ないタイプが19%、多いタイプが32%いるそうです。
セロトニンは幸福ホルモンと言われています。日本人はセロトニン不足の人が多いことになります。
よく、日本人は電車のなかでものすごく暗い顔をしていると言われますが、なんとなく納得です。

なぜ日本人の脳がこういう特質を持つようになったかのか。
日本という国土には地震や台風、水害や噴火などの自然災害が多く、いつも最悪の事態に備えて緊張していなくてはならない。そういう歴史に脳が適応しているのではないかという仮説があります。

そして確かに、前人未到の地に分け入って開拓を続けなくてはならなかった米国人は、チャレンジが好きでポジティブな脳の人が生き残ったと言えます。
つまり、その環境に適応的な心身の人が生き残っていって、その民族特有の体質・気質(脳の特徴)が獲得されるということなのでしょう。

自分がいつも不安だったり、臆病だったりするのは、このような脳の特質のせいなのかもしれません。
そうだとしたらなんだか損ですね! 
誰だって自然にポジティブに考えられる脳のほうがいいに決まっています。

けれどそういう楽観的な脳だと、きっとこの災害列島では生き残れないのでしょう。
そういう特質はそれなりの働きがあり、メリットもあるのです。
臆病な人のほうが長生きという研究結果をどこかで目にしたことがあります。
当然ですね。
コロナが流行ったら必死でマスクをしますもの。

けれどこういう特質も環境によって変化することが可能。
脳には可塑性があり、人間の遺伝情報がどのように発現するかも、環境に左右されるそうです。
まだまだ脳やDNAにはわからないことが多く、好奇心をかきたてられますね。


なぜ人は不安に惹きつけられるのか

不穏なニュースばかりのこの頃、社会全体が鬱っぽくなっているようです。
しかし休校になってから、今まで人の気配のなかった公園のそこここに、子どもたちの小さな集団が見られるようになってきました。
外遊びなどしていなかった子どもたちにとっては、良い経験かもしれません。

コロナに関しては、自分にできる精一杯の防御をして終息を待つしかありません。

こんなふうに不安な対象が出てくると(コロナに限らず症状などでも)なぜか私たちは、その対象に惹きつけられるようにネット検索をしたり、本を買ったり、それに関する情報を集めるようになります。

そうすると当然のことながら、その不安は拡大していきます。
まだ自分の身に起こってもいないことがリアルに、起こったかのように感じられたりします。
そして不思議なことに、ネット検索をし続けた結果、安心材料を見つけるという事は少ないようです。
たとえあったとしてもそこには目が行かず、悪い結果になったことばかり記憶に残り、どんどん不安は高まっていきます。
精神交互作用ですね。

それにしても、なぜ人は不安材料にばかり惹きつけられるのでしょう。
これは人が持って生まれた防衛本能なのでしょう。
不安は自分の身を守るために存在する。
なくしてはならないものです。

けれどそれが日常生活を侵食するようでは本末転倒

不安に惹きつけられているなと思ったら、まずはスマホやPCを閉じて、仕事や家事に戻ったほうがいいようです。

不安に惹きつけられるのと対照的に、私たちは明るいものごとに目を向けるのは苦手なようです。
以前、グループのアイスブレイクに「良かった探し」というゲームをしたことがあります。
その日、あるいは最近体験した「良かったこと、うれしかったこと」を探して発表しあうというものです。
いつも不安を訴えてばかりのかたでも、たくさんの「良かった」体験をしているものです。

不安には自然に惹きつけられるのですが、良かったことに目をとめるのは、意外にエネルギーが必要です。

さて、このコロナの時代に良かったことを探すのは実にむずかしい。
実際に大変なことばかりだし、ニュースも暗いものばかり。

でも、今日ネットで、ノーベル賞受賞の科学者が、「コロナのパンデミックはそれほど長引かない。国にもよるが、もうすぐ鎮静化する(大体の要約)」と言っている記事を見つけました。
https://www.gizmodo.jp/2020/03/the-end-of-pandemic.html

実際、中国はもうおさまりかけています。
韓国もそろそろ。
(ただし検査数を絞って、軽症者を野放しにしている日本はどうなるかわかりませんが)

やはりニュースも不安を煽ると、皆の目が惹きつけられるから大げさなタイトルをつけるのでしょう。
たまにはこういう希望のある意見をもっと流してほしいですね。

とにかく、皆さま、お気をつけてお過ごしください。
HT桜2T.H氏撮影



プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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