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神経質あるある  弱力性と強力性

神経質性格の特徴のひとつは、「弱力性」と「強力性」とが共存していることです。

森田正馬は、「弱力性と強力性」という言葉を使っていなかったと思います。これを使い始めたのは高良先生かと思いましたが「森田療法のすすめ」(高良武久著)のなかには見つけられませんでした。
もちろん森田正馬は、それと同じような意味のことを、対人恐怖を定義する言葉として述べています。
「恥ずかしがることをもって自らふがいないことと考え、恥ずかしがらないようにと苦心する負け惜しみの意地張り根性である」

つまりここでは「恥ずかしがる」のが弱力性です。
受動的で内向的、過敏な性格傾向ですね。

しかし神経質はそれだけではすまない。その「恥ずかしがる」ことを悔しく思い、それを他人に見せないようにして、むしろ大胆な性格を装います。
これが強力性です。強気で、優越欲があり、立派に見せたいという部分です。

つまりこの弱力性と強力性のぶつかり合いが激しいから、神経症の葛藤が生まれてくるのでしょう。

確かに、私が今までお会いしてきた神経質の方々は、一見物静かでありながら、強烈に負け嫌いのかたが殆どでした。
内心負け嫌いなのに、外面では「おとなしそう」に見える、というのも気に入らないポイントのようです。

ちなみに、ほとんどの神経質のかたは「おとなしい」と形容されることを死ぬほど嫌います。
このあたりも、強気な自分が弱気に見えるということを悔しいと思う心情の表れなのでしょう。

さて、弱力性と強力性がせめぎあった性格を、ではどうしたらいいのかということですが、森田療法的結論で言うと、どうする必要もない。
自分のなかにあるものは「そのまま」でいるしかしかたがない。

そしてまた、「自分のなかにあるものは生かす」という方向性も大事です。
強力性があり、負け嫌いならば、それは努力して成果をあげる原動力になるでしょう。
弱力性があり、過敏であることは、危険を避ける、慎重であるという利点になります。

だから、そのままでいいのです。

けれど、自分に優越欲があり、そのため人との比較でいつも苦しくなるというかたがいる。
何をするにも不安で、気の休まる暇がない、と嘆く方もいるでしょう。

大丈夫。
人間は変化します。

経験を積み、そのなかで自分の体力や能力の「あるがまま」を知る。
そして覚悟して「そのままの自分」から出発しようと思えるようになれば、もはや人との比較で一喜一憂することもなくなります。
むしろ、自分の変化や、外側の物事のなりゆきのほうに興味が湧いてくる。
無理して優越欲を満たす必要はなくなって、自分のやりたいことができればそれでいいと思えるようになる。

また経験を積んでいくと、今までいろいろなことが不安だったけれど、だんだん「できること」が多くなっていく。
不安がまったくなくなることは、この人生ではあり得ないけれど、でも知識や経験が不安を軽減してくれることも多いのです。

弱力性や強力性は、自分のなかに残るけれど、そんなことは問題にならない世界が開けてくる。
ただ、現在の葛藤はそのままに、欲望を自覚して「今、ここ」を生きていればいいのです。

初夏の花

神経質あるあるーー「かくあるべし」変換

森田療法は誤解されやすいと、よく言われます。
森田療法を誤解したまま嫌いになる人の話も聞きます。

確かに森田療法は誤解されやすいと、私も思います。
カウンセリングの過程でも、最初の「まず身体を動かしましょう」的なところを森田療法の全体と思ったまま中断してしまう人もいて、なかなか「感情」に対する癒しや平等観までたどり着かない。(これには自己洞察が伴うことも必要なので、むずかしいですね)
森田カウンセリングの難しさを感じるところです。

誤解されやすい要素のひとつに、森田療法の考えを「かくあるべし」でとらえてしまいがちな人が多いからということもできます。

森田正馬は自分の治療法をあまり理論的に語りませんでした。
それに比べると、海外の新しい認知行動療法などは、実に微に入り細にわたり理論を言葉にし、マニュアル化しています。

森田全集第5巻を読むと、しかし森田自身は極力、理論化(理屈に偏る)ことを避けているように読み取れます。
それは、彼が「神経質性格」の特徴を熟知していたからだと思われます。

神経質は「言葉」「観念」が先行する人たちです。
神経症の人が、必ず「治るにはどうしたらいいんですか?」と最初に問うのも、きっと「一番早くて近い道(マニュアルや公式)」がどこかにあるはずで、それに従っていけば治るはずだという考え方があるからでしょう。

この場合、自分の事実を真摯に見つめて、人生を再構築していこうなどという考えがないことが多い。

ですから、何か自分に納得できる言葉が見つかると「森田では~~すべきなんだ」と解釈して、それをひとつのポリシーのようにして遵守する。
それを仮に「かくあるべし」変換と呼んでみましょう。

もともと「かくあるべし」に悩まされて症状に至ったはずなのに、森田療法を学んで新たな「かくあるべし」が積み重なっていくという事態になります。
ルールを守るとか、決まったことに従うというのは得意なので、「苦しくても行動しなくてはならない」「とにかく努力しなくてはならない」「欲望を見つけなくてはならない」という「かくあるべし」に従って、どんどん苦しくなっていく。

これを森田正馬は「教条」と言いました。
この教条化を防ぐために、彼は比喩や具体例を多用して、真髄を伝えようとしたのです。

「~~しなければならない」というのは、森田療法ではありません。

大事なのは、行動してみたときに生まれる自分のなかの生き生きした感情、新しい発見、自分の心が動いていくこと。
それはマニュアルのように「こうしたら、こうなる」というものではありません。
予期せず、自然に自分のなかに生まれてくるもの。
意図して生みだすものでもありません。

「こうしなくてはならない」という形だけを追うのではなく、いいかげんでもいいから試してみて、内側に湧いてくるものに気づく。

森田療法はもっと自由なものであるはず。

森田を学んでいるかたは、自分のなかの「かくあるべし変換」がないかどうか、一度洗い直してみるのもいいかもしれません。

パンダツリー

パンダツリー、上野松坂屋

神経質あるあるーー全部自分のことになる

神経質症(不安障害)のカウンセリングをするときには、神経質性格の特徴を知り分けていることが必須になります。

私は今までたくさんの(数千人?)の神経質のかたとお会いしてきました。
もちろんクライエントさんはそのなかの一部のかたで、あとは友人、グループメンバー、職場の同僚等、いろいろな立場で関わってきています。

そんなプロセスのなかで、神経症になる神経質性格のことを、深く知り分けることになってきましたが、あまりに知っているからこそ、このブログに書くときに躊躇してしまうトピックも出てきてしまいます。
このブログの読者のかたに神経質のかたが多いと思うと、書くことをためらう場合があるのです。

さて、そんな神経質性格のことを時々「神経質あるある」というタイトルで書いていこうかなと思います。

今回は「なぜ私が書くトピックを選んでしまうか」について。

昔、神経質のグループの機関誌を編集していたとき、特徴的なクレームがありました。
たとえば、記事のなかに「統合失調症」「躁うつ病」などのことが書いてあると、クレームがくるのです。(もちろん一部のかたからですが)
「こんなことを掲載されると、自分がそうではないかと不安になるからやめてほしい」
この頃は「発達障害」というワードが世間でよく聞かれるので、「私は発達障害ではないか」と不安になる神経質の人も多いようです。

その頃のグループの編集員会では、これに困って「神経質以外のことは載せないほうがいいのか」と議論したことがあります。
そのときに「焼き魚の骨をとってあげるのはやめよう」という編集長の一言で、記事に制限はかけないようになりました。

たとえば、これは病名や障害名に限らないのです。
神経症の症状は様々ですから、自分の症状以外の事例が出ていると、「自分もそうなるのではないか」と恐怖に駆られ、森田療法の本が読めないかたもいらっしゃいます。
なんでも自分にひきつけて考えてしまうのです。

ところが不思議なことに、そのかたの症状がおさまって、神経症状態から抜け出すようになってくると、そういう訴えはあまりなくなります。

「自分」がしっかりしてきて、自分の外に目が向いてくるので、そこまで自分にひきつけて考えなくなるのでしょう。
自分のことがよくわかってくるのかもしれません。

ただ、不快な情報に対する耐性が低いのは、そのまま残ります。
これは症状の発生の部分に関わることですね。
これについてはまたそのうち書きましょう。

というわけで、このブログを細く長く続けていくうちに、私の中に無意識の取捨選択が働いてしまって、ちょっと窮屈感がある昨今です。

それほど窮屈に考える必要はないのかもしれませんけれどね。

スイレン
プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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