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レナード・コーエン

たまには好きな音楽の話を。

私はここ何年か、歌い上げる系統の歌を聞いていたのですが、最近何だか脱力系の歌のほうが疲れなくていいなぁと、感じ始めています。

で、あるとき、脱力系かつものすごい低音の歌声を見つけてしまいました。

レナード・コーエン(Lenard Cohen)の歌でした。
私が無知だったのでしょう。 彼は北米圏では大御所で、「カナダのボブ・ディラン」と言われている人です。

彼は歌手であるだけでなく、詩人で小説家。
何曲が聞いてみたら、歌詞はかなり難解。でも面白い。
暗い感じだけれど、なんとなく落ち着く。

たとえばこんな歌詞も面白い。(Waiting For The Miracle)
Ah baby, let’s get married       
We’ve been alone too long      
Let’s be alone together      
Let’s see if we’re that strong      
(ベイビー、結婚しよう/お互いあまりにも長い間孤独だったよね/だから一緒に孤独になろう/自分たちがどれだけ強いか試してみよう)

この人の歌は歌詞の面白さなんでしょうね。もう少し読み込めるともっと面白いと思うのですが、何しろ歴史的な出来事の含みや、聖書の知識がないとわからないことなど、たくさんあるのが残念です。

レナード・コーエンは1934年カナダのモントリオール生まれ。
ユダヤ人。 母方の祖父がラビ(律法学者)で、父方のコーエンという姓は、「司祭」を意味し、ユダヤ人の間ではコーエン姓は「アーロンの子孫」つまり、モーゼの兄の家系と言われているのだそうです。
由緒あるユダヤ教の家柄出身。

彼の歌にはユダヤ人であること、被差別であること、虐殺の犠牲になった民族であることがそこここに見え隠れします。

たとえばThe Future という歌はコーエン版「悪魔を憐れむ歌」。
悪魔?らしきものが血みどろの未来を語ります。そして悪魔は歴史のなかの汚点とも言えるものを「オレに返せ!」と歌うのです。
スターリンを返せ! ベルリンの壁を返せ! ヒロシマを返せ! の連呼のなかに「キリストを返せ!」「パウロを返せ!」が出てくる。
歴史をユダヤ人の側から見ればそうなるのでしょう。

さて彼は9歳で父をなくし、それが後年の彼のうつ状態の遠因とも言われています。
大学時代から詩集を出版していますが、うつ的な感覚に悩まされ、ドラッグ依存、女性依存を繰り返します。
34歳で歌手デビュー。
歌の内容は宗教的なものから、愛の歌、社会的なもの、歴史や聖書を扱ったものなど様々です。
今まで20枚近いアルバムを出していますが、地味ながらコアなファンが多く、また他の歌手にもカバーされることが多いようです。

でも、プレスリーやマイケル・ジャクソンがカバーしても、コーエンの重低音の迫力にはかなわないかな・・。

さて長い歌手人生のなかでいろいろなことがあったようです。
結婚に失敗したり、友人に横領されたり。

1994年、60歳のときコーエンは突然、ロサンゼルス近郊のボールディ山にある「禅センター」に隠遁します。
そのなかのコテージで作曲などしながら、日本の寺より厳しいという禅の修行をし、1996年得度して、臨済宗の禅僧になります。

ユダヤ教の家柄の人が禅僧になってしまったのですね!
あるいは彼は、禅の老師に父親的なものを求めたのかもしれません。

そのときの取材ビデオがありますが、作務衣でお茶碗洗ったり、掃除したり。
「全身の細胞がthank you と言っている」という言葉も。
きっと「悟り」を開いたのでしょう。

1999年、彼は山を降ります。(モーゼみたい)

音楽活動に復帰して、またアルバムを出し、ツアーを再開。

なんと2012年に78歳でワールドツアー、2014年には80歳で新しいアルバムを出しています。

歌が暗いわりには元気です。
80歳のアルバムのカバーもステッキをつきながら、結構ダンディ。

どうもこの人のお念仏みたいな重低音の歌は、催眠効果があるのか、クセになります。

下は、禅僧になってからのアルバム(Ten New Songs)にある歌。やはり暗い。

けれど You live your life as if it’s real (まるで人生が実在するかのようにお前は生きる)・・・なんて歌詞を見つけると、またまたクセになりそう。






2cellos

増税前の3月、なんとなく街はあわただしく、「あれしなくちゃ」「これ買わなくては」「期末だから使っとこう」とか、人が右往左往している感覚があります。

この3月は、なぜか大物ミュージシャンが何人も(何組も)来日しましたね。

私も行きましたよ。
あの人も、この人も。


そのうちの一組、2cellosのコンサートにも行きました。
まだ大物ではありませんが、比較的若くて新しい才能の2人、

2cellosは、クロアチア出身。ステファンとルカの二人組のチェリスト。


2人はもともとはライバル同士。
2人ともウィーンに留学し、その後ロンドンで学び、クラシックのチェリストとして数々の受賞歴を持つそうです。

その2人が、2011年にYOU TUBE に投稿した「Smooth Criminal」の演奏が、またたく間に何百万ものPVを獲得し、一躍有名になりました。

私も時々、YOU TUBE で遊ぶので、この動画を見つけて楽しんでいました。


ところが、彼らはアッという間に有名になり、毎年日本に来てコンサートを開くようになりました。
会場も、どんどん大きくなり、今回は渋谷のオーチャードホール。


3月11日には、仙台市で東日本大震災復興支援公演を行っています。


彼らは日本には思い入れがあるらしく(真偽のほどはわかりませんが、ステファンの元カノが日本人、ルカは日本にホームステイしたことがあるとか)、2012年には街頭でチェロのケースを広げて、東日本大震災復興のための街頭ライブを行ったという話です。

街角で2cellos が聴けたなんていいですね。


コンサートのほうは、相変わらず激しく、会場にはもしかしたらクラシックコンサートと間違えてきたのではないかという感じの人もいて、大丈夫だったかしら、という感じ。


しかし、しっとりした感じの曲もあり、なかなか刺激的なコンサートでした。


私はどうも弦楽器が好きなようで、チェロ、ヴァイオリンの音色に魅力を感じます。


コンサートは刺激的ですが、CDでじっくり聴くと、チェロの音色は、情感豊かでしっとりしています。


もとの技術がしっかりしていないと、崩すことはできないものね。


彼らの「Welcome to the Jungle]です。

     


         お勧めのCD



        





Summertimeを聴きながら、「表現」について考える

真夏です。暑いです。

外に出るときは日焼けよりも、命を気にかけなくてはなりません。
私は出勤時、凍らせた小さな保冷剤をハンカチに包んで持ち、時々首筋にあてながら出勤。
これいいですよ!

さて表題のSummertimeです。
サマータイムと書くと、夏時間みたいなので、英語にしました。

これはガーシュインの名曲、オペラ「ポギーとベス」のために作曲されたアリアだそうです。
いろいろな歌手がカバーしていますが、私が最高だと思うのはジャニス・ジョプリンのカバー。

本日はジャニス・ジョプリン(Janis Joplin1943~1970)の話を。

もう昔の人かもしれませんが、ロック、ブルースが好きなかたでジャニスを知らない人はいないでしょう。

彼女の人生は、「自分を表現すること」に費やされ、そして表現したがゆえに起こってくる様々なことに直面してしまったものでもありました。

彼女の生まれ育ったのは米国テキサス州のポート・アーサーという非常に保守的な土地。
そしてごく普通の家庭で育ちます。

女性は学校を卒業したら主婦になり子を育てるのが常識という土地柄で、彼女は高校時代から異彩を放っていました。
髪をオレンジ色に染めたり、政治的発言をしたり・・

彼女の場合、「目立ちたい」というより、その表現に「どうしてもそうしなくてはいられない」という欲求を、私は感じます。

当然、級友からは孤立し、はずされていきます。

大学をドロップアウトし、カリフォルニアに出て歌手となった彼女は、そこで水を得た魚のように頭角を現します。
ベトナム戦争の時代、カウンターカルチャーの花開いた時代です。

ロック歌手として認められていく彼女ですが、非常に特徴的なのは、彼女がいつも故郷のこと、家族のことを気にしていることです。

ドラッグに溺れそうになった彼女は、一度は故郷に帰り、婚約してそこで暮らそうとしますが、破綻します。

カリフォルニアに帰ってからも、母宛に何通も手紙を書きます。
「ロックスターになれたんだよ、私を認めて!」という思いもありながら、父母の望む「普通の生活」を送れなかったことについての謝罪の言葉もあります。

しかし両親はどうやら、最後まで彼女の生き方が理解できなかったようです。

1970年、ジャニスは高校の同窓会へ出席しようと、帰郷します。

今度こそ、彼らの仲間になれるかもしれないと思ったのかもしれません。
マスコミを引き連れ、独特のファッションで出席した彼女を、級友たちは歓迎するどころか奇異の目で見て、遠巻きにします。

そしてその同窓会の日、何をおそれたのか、両親は車で町を脱出します。

彼女は結局失意のうちに、またカリフォルニアに帰ってきます。
そしてその年の10月にドラッグで命を落とすことになるのです。

ジャニスの歌が私たち心を打つのは、彼女が決して口先だけで器用に歌ったりしないこと。
一曲一曲に自分のすべてをこめて、表現しているように感じられるのです。

彼女はそうせずにはいられないものを、自分のなかに持っていたのでしょう。

ありのままの自分を表現することは、多かれ少なかれリスクを伴うものです。

芸術的な表現だけに限らず、会議での発言でも、ものを書くことでも、スポーツでも、それは自分自身の表現です。
表現した次に何が起こってくるか、それはわかりません。
賞賛かもしれないし、非難かもしれないし、ノーリアクションかもしれない。

けれどそれは、どんなに痛くても自分が引き受けなくてはならないものです。

さて、ジャニスの歌で私が一番好きなのは「Me and Bobby McGee」。
ロードム―ビ-のような情景を彷彿とさせるこの曲にはこんな一節があります。

Freedom is just another word for nothing left to lose.
(自由とは失うものがないことよ!)

そして、Summertime。

子守唄の形式をとっているこの歌は、赤ん坊にこんなふうに呼びかけます。

 ある朝、あなたは立ち上がり、そして歌い始める
 翼を広げ、空へ飛び立とうとするでしょう
 でも、その時がくるまでは、誰もあなたを傷つけたりしない
 だから、今は泣かないで

全力で自分を表現し、そしてその表現があまりに個性的で突出しているがゆえに、多くの痛みを引き受けなくてはならなかった彼女の人生。

ジャニスの声には、その人生の痛みが表れているようにも感じられます。

ボチェッリを聴きながら、悲しみについて考える

何ヶ月か前、あるオムニバスCDを聴いていたときのことです。
私はパソコン仕事をするときに、こういうのをよくかけます。

で、そのなかに一曲、「あ、オペラの人だな」と感じる男性の歌声がありました。

実は、私はオペラは食わず嫌いです。
オペラ的な声が聞こえてくると、「わかった。立派な声なのはわかった。でももういいよ!」という感じになってくるのです。

それで、私は最初、その曲を聞き流しました。
「あ、オペラの人ね、テノールね」という感覚でした。

ところがそのうち、仕事をしていて、その声が流れてくると、なぜか手がとまってしまうようになったのです。
嫌いなはずのオペラの声であるにも関わらず、どうしてもその声に耳が持っていかれるのです。

不思議な声でした。

声量はあるけれど、男声としてはどこか線が細く優しい。
シナトラやエルビスのように「甘い」とか「セクシー」とか表現されるような声ではありません。
むしろそういう感覚はまったくなく、若木のように伸びやかで清々しいのです。
「無垢」という言葉さえ想起させる声でした。

それでいて、何を歌っているかわからないのに(イタリア語なので)その声は私の中の情感を、どうしようもなくかき回すのです。

「なんだろう、これは?」
「アンチオペラ」の固定観念で逆らっていた私も、ついにその歌手の名前を見ました。
「アンドレア・ボチェッリ(Andrea Bocelli)」と読めました。

もう既に世界で数千万枚のCDを売り上げている「奇跡のテノール」を、私はその時はじめて知ったのでした。

そしてネットで調べ始め、あるところに来て、検索の手がとまってしまいました。

ボチェッリは全盲のかただったのですね。

彼はイタリアのトスカーナで生まれました。
音楽が好きな少年でしたが、生まれつきの弱視で、12歳のとき、サッカーボールが頭にあたり、脳内出血で完全に失明してしまいます。

その後、親の勧めでイタリアの名門、ピサ大学に進学し法学博士号を得て、弁護士の道に進みましたが、音楽への夢を諦めきれず、声楽のレッスンを始め、見出され、歌手として自立していきます。

グラミー賞はじめ数々の音楽賞を受け、今や世界のトップアーティストの一人。

あの有名なサラ・ブライトマンの「Time to say goodbye」の原曲は、この人の歌った「Con Te Partiro」だということも知りました。

「9.11同時多発テロ」のとき、テロの後48日目に開催された遺族のための追悼式のとき、ボチェッリはイタリアから駆けつけ、硝煙くすぶるグランド・ゼロで「アヴェ・マリア」を歌ったのだそうです。
その瞬間、会場は水を打ったように静まり返り、遺族たちはいっせいに涙したそうです。
考えるだに、すごい光景です。

こんなことを知ってから、わたしはボチェッリを聴き始めました。

カンツォーネ、ポピュラー、アリアなど様々なジャンルを歌っている人ですが、聴いていると、言葉はわからないのに、時として泣けてくる。
表現力の凄さということもあるでしょうが、彼の声自体に、哀感が内包されているような気がするのです。

もちろん彼は前向きな人ですし、ポジティブな生き方をメッセージとして歌で伝えたいという人ですので、これは、私の勝手な思い入れかもしれません。

まぁ、思い入れであろうと、どんなふうに感じるかは私の自由。

彼の声から、どうしても私は「悲しみ」ということを想起してしまうのです。


「悲しみ」という言葉を聞くと、後ずさってしまう人がいるかもしれません。
「悲しみ」というと抵抗感がある、「怒り」のほうが、表現しやすいという人が多いのでしょうね。

「怒り」は、どこかパワーや強さと通じるところがある。
「悲しみ」は、弱さに通じるような感覚があり、悲しむことを親から禁じられたり、自分で規制してきた人もいるでしょう。

しかし、もしかしたら、あなたの「怒り」の向こうにあるのは「悲しみ」かもしれない。

たとえば、もう失ってしまい、二度と取り返せないものへの悲しみ。
今生では、決して得ることのできないものを求めてしまう悲しみ。
この人生で背負っていかなくてはならないものへの悲しみ。

誰にでもそんな悲しみはあると思います。

時には、悲しむことを怖れず、それを自己憐憫などと思わず、ひたってみてもいい。

そんなとき、私がボチェッリを聴くように、自分の好きな音楽やドラマ、書物、映画に感情を仮託して、悲しんでもいい。

悲しみが悲しみを癒す。

そんなひとときが、きっとあると思うのです。

              
             
            できれば目を閉じて聴いてほしい・・



            

ロンドン五輪の楽しみかた

私は基本的にミーハーなのでしょう。
今回のオリンピックも結構楽しみでした。

ロンドン五輪が楽しみだった要因のひとつは、開会式。

スポーツ自体は、実はそんなに詳しくなく、メダルの数とかもどちらかというと、そこまで興味がないのですが・・・

なにしろ、イギリスでのオリンピック。

イギリスには、錚々たるミュージシャンがいるではないですか。
もちろんのことながら、ビートルズ、ストーンズ、クイーン、レッド・ツェッペリン、キング・クリムゾン・・・そして私の大好きなマイク・オールドフィールド。

絶対 誰かは開会式にでるよね、と思っていたら、やはりこの人でした。
エリザベス女王のすぐあとに、演奏しました。
マイク・オールドフィールド。

前にもこのブログに書きましたが、私はこの人の自伝を原書を取り寄せて読むくらいのファンです。

彼は多分、イギリスでは国民的なミュージシャンなのではないでしょうか。

演奏したのは「Tubular Bells」「Tubular Bells Ⅲ」フォークダンス風の「In Dulce Jubilo」

その演奏中に会場で展開されていたのは、ロンドンの子供病院の風景。
そこに出てくるイギリスの童話やハリーポッターの中に出てくる妖怪たち、そこにメアリー・ポピンズが登場して、子供たちを救うというストーリー。

なぜか、マイク・オールドフィールドの曲には、子どもたちとかファンタジーの世界が似合うのですね。


このストーリーのコンセプトは、National Health Service という国民健康保険のアピール。
英国では医療は無料なのです。

このことは、マイケルムーアの「シッコ」という映画で取り上げられていました。
この映画は国民健康保険のない米国の問題を描いたものでしたが、これを見て私は、高い保険料を払っているのに、診療の度に結構なお金をとられる日本ってどうなんだろうと思ってしまいました。

ちなみに英国は、相互扶助の精神が発達しているのでしょうか、所得税もとても高く、ビートルズもストーンズも税金が払えずに米国やフランスに移住してしまったのだそうです。

もひとつちなみに、日本は高額所得者にとっては住みやすい国で、1~2億円で税率が最高、それ以上になるとかえって税率が低くなるそうな。
どこかの時点で、高額所得者減税をしたようです。

日本では消費税増税より、高額所得者の税率を見直してほしいものです。

で、英国の消費税率は17.5%、でも食品は0%です。
絶対に必要なものには課税しない。

国としての考え方がしっかりしているのでしょうね。

なんでこんな話になってしまったのでしょうか。
開会式の話をしていたんですね。

では、開会式のその部分を・・


それにしても、開会式で、私が残念だったのは、ストーンズが映像だけだったこと。
ミック・ジャガーも出るかと期待していたのですが・・

    



プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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