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Man on Wire

Cutting edge という英語があります。
「最先端」とか「最前線」とかを表わす言葉ですが、何か実に言い得て妙。「格好いい」と思える英語ですね。

 そう、昔々、私が若かった頃、そこらへん中にCutting edge を気負う若者たちがたむろしていました。
 革新的な政治を論じ、ロックバンドを組み、前衛詩を書き、前衛演劇を志し・・・
 他人ごとのように言いますが、私も少しは気負っていたかも。

 あの人たちは、一体どこに行ってしまったんでしょうね。
 今でも引き続きCutting edgeでいる人はどのくらいいるんでしょうか。
 企業の重鎮になったり、研究者になったり、家庭のなかで幸せを築いたりしていてくれればいいのですが、破滅型人生に突入し、お酒で自分をごまかして、身体を駄目にしてしまった人もいるのではないだろうか・・・などと、思ってみます。
 ずっと、Cutting edgeでいるなんて、至難の技。
 で今日は、若いころからずっとCutting edgeでいる人のことを、書いてみましょう。

 彼は、フィリップ・プティ(Philippe Petit)。フランス人。綱渡り師です。
 というと、もうご存じな人は、ご存じですよね。
 彼は、かつて、ニューヨークにワールドトレードセンタービルがあった頃、その二つのタワーの間にワイヤーを張り、綱渡りをしたのです! 命綱なしで。

 もちろんこれは許可を得て見世物として行われたわけではありません。
誰もそんな危険なことを許可しませんよね。

 彼はそれまでにも、無許可で、ノートルダム大聖堂、シドニーのハーバーブリッヂで綱渡りをしています。警察も終わるまで手が出せません。
 彼は協力者を集め、計画を練り、資材をそろえ、英語も不自由なのにワールドトレードセンター(WTC)にもぐりこみ、準備万端整えて、綱渡りをしたのです。
 それは1974年8月のこと。WTCは完成直後で、誰も2001年にこの巨大なビル群が消滅してしまうなどと想像もしなかった頃のことです。
 その彼の綱渡りが、決行までのいきさつとともにまとめられたのが「Man on Wire」(2008)という映画で、アカデミー賞をとりました。
 
 では、夏の暑さも飛んでしまうような映像を・・・
 なぜ、彼はこんなに高いところで楽しげに笑ったり、寝転んだりできるんでしょう!





 フィリップ自身が、この体験を著した本もあります。
 彼はこの体験に飽き足らず、この後も様々なところで綱渡りをしています。非合法から合法へと変わっていったようですが。
 しかし歳をとっても、綱渡りをするには、日常の鍛練と節制が必要ですね。
 つねにCutting edgeである自覚がないと、このような肉体を使うアートは、成り立たないでしょう。

 フィリップ・プティの言葉。

   人生はエッジを歩いてこそ価値がある
   反骨精神を持たねば
   社会の規則に慣らされることを拒み―
   出世を拒み― 
   繰り返しを拒む
   日々 すべての発想を
   真の挑戦と受け止める  
   そうすれば人生は綱渡りになる



プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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