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ベートーヴェン「不滅の恋」

アルコール依存症の話続きでベートーヴェンのことが書きたくなりました。

なぜかと言えば、ベートーヴェンの父親も、ベートーヴェン自身もどうやらアルコール依存症だったようなのです。


で、私が繰り返し見たくなる映画のひとつに、少し古いものですが「ベートーヴェン・不滅の恋」(Immortal Beloved)があります。
何しろサウンドトラックがベートーヴェンですから、いつ見ても(聞いても)うっとりします。


この映画は、ベートーヴェンが遺した「不滅の恋人」への手紙をもとに、その不滅の恋人とは誰かを探していくというお話。
それが誰かというのは映画のなかのフィクションですが、不滅の恋人への手紙は実在するそうです。

ベートーヴェンを演じるのはゲーリー・オールドマン。


この映画のもうひとつの基調にあるのは、ベートーヴェンの非虐待体験です。

アルコール依存症の父のもと、長男として音楽教育という名目で殴られ、虐待されていた体験が描かれます。

これもフィクションではなく、事実のようです。
父親がアルコール依存だったら、そういうこともあったでしょう。

そして彼の耳の障害が、その虐待の結果ではなかったかということも示唆されています。

ベートーヴェン自身、甥のカールを引き取って育てるも、愛し方がわからず、結果として虐待的な扱い方をしてしまいます。


数々の傑作を完成しながらも、決して幸せではなかったベートーヴェンの生涯を、この映画は、当時の社会背景もまじえて描いていきます。


ここまで書いてふと気づきました。

私の好きな作曲家は、クラシックではベートーヴェン、現代ではマイク・オールドフィールドなのですが、二人ともアルコール家庭で育った人だったのですね。

マイク・オールドフィールドの場合は、身体的虐待ではなく、ネグレクトですが。


こういうのを「昇華」と言います。
フロイト派の考える「防衛機制」の一種ですが、自分の満たされない欲求や抱えていた問題を芸術や仕事、何らかの事業として表現し、解消することです。

様々な防衛機制のなかでも、生産的建設的なものです。


また話が飛びますが、あのヒトラーも、父親からの苛烈な身体的虐待を受けて育ったことが知られています。(アリス・ミラー「魂の殺人」)

モンスターは真空からは生まれません。
モンスターが生まれるには何らかの原因があるのです。

ヒトラーは青年期に画家や建築家を志したようなのですが、もし彼が画家としてのアイデンティティを持てていたならば、世界の歴史は変わっていたかもしれません。


人が持てる才能を伸ばすこと、そしてその機会を得ることが、どんなに大切なことか、つくづく考えさせられます。


    

これは映画の第九のシーン。YOU TUBEで全編が見られるようです。






プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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