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着手恐怖

「ちゃくしゅ」恐怖と読みます。
神経症(不安障害)の症状のひとつです。
聞いたことがないかたが多いかもしれません。

もちろん神経症というのは、人間が不安になってひっかかる、どんなところにも出てきますので、「~恐怖」というのは、不安の数だけあると言ってもいいのです。

ただ、共通しているのは、症状ができてくる「からくり(プロセス)」だけです。

自分の感じた何かの違和感に執着し、それをどうにか取り払おうとやりくりするなかで、その違和感はどんどん大きいものになり、四六時中心から離れなくなる。
それが森田療法で言う神経症というものです。

しかし元になった不安は、人間ならば誰でも時と場合によって感じるもの。

森田療法が症状に対して何をするのかというと、この不安をきれいに取り去ることではないのですね。
「まず第一にその複雑な精神の葛藤を去って、これを単純な苦痛または恐怖に還元すること」なのです。(森田正馬)
つまり、「異常な不安」を「単純な不安」にしていくと言っていいのかもしれません。

もちろんここで症状は楽になりますが、森田療法のすることはそれだけではありません。その人の偏った価値観や人生観を変革していく方向にも働くのです。


それはまた別の機会に書くとして、今回は「着手恐怖」の話。

何か自分が大事だと思うことや、やり遂げるのが困難に感じられることに手がつけられないという症状です。

まさに誰にでもある不安ですね。

たとえば、レポートなどがどうしても書けない。提出期限ギリギリになっても手がつけられない場合。

「いいものを書きたい」という完全欲と、「いいものを書くにはたくさん調べ物をして、たくさん本を読んでとりかからなければならない」等という「かくあるべし」が、ものすごい「おっくう感」を引き起こし、手をつけるのさえ怖くなってしまう。
ギリギリになってあわてて書いて出すが、「もっと早く手をつけていれば、ずっと良いものが書けたのに」と後悔してしまう。

あるいは仕事で、これを片付けるには、苦手な人に連絡しなくてはならない。
しかしその連絡にどうしても手が出ない。
そのうちにタイミングを逃し、ますますバツが悪くなりギリギリになって連絡して失敗してしまう。

でも、これはむしろ普通の場合かもしれません。

「症状」ともなると、最後までレポートや論文が書けない。
苦手な仕事を無視して、結局やらずじまいになり、でもそのことをいつも心の片隅に持っていて、後悔し続ける。
次にはしっかりやろうと思っていても、同じ場合がくると同じように逃げてしまう。

こういうのが「着手恐怖」です。実生活に影響が出た場合ですね。

これも結構苦しいものです。
いつもいつも「できない自分」を責め続けているわけですから。

森田の処方はこうです。
書きたくないものがあったら、まずは机に原稿用紙や参考書をひろげる。
そしてそれを目の前にして眺めている。
そのうち少し書き出しだけでも書いてみようとかそういう気が起きたら書く。
途中でやめてもよいけれど、とにかくその道具だけでも出してみる・・・つまりまずは少しそれに関連した準備だけでもやってみる、ということでしょうか。

「やる気」など、待っていても起きませんから。

私も人前での話の準備におっくう感があります。
そんなときにはまずはPCの前に座る。

パワーポイントを開いてみる。(結構ここまでが大変だったりします)
デザインだけでも決めてみる。タイトルだけでも入力してみる。

そんなことをしているうちに、なんとなく気持ちがのってくるものです。
(しかしPCのこわいところは、そのうちネットの世界に迷いこんで時間がたったりすることですが)

こういうことは誰でも悩むことなのです。

それに「完全」というのは絵空事でしかない。

ものごとというのは及第点がとれればいいのだと、四苦八苦するうちに体験的にわかってくる。


どこかで完全でない自分にあきらめがつく。
きっとそんな体験にゆきあたる時がくるのではないかと思うのです。


          つつじ
プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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