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絶望名人

本日は本のご紹介。
「絶望名人カフカの人生論」(飛鳥新社)です。

友人にこの本を教えてもらったとき、「こんなコンセプトの本があるのか!」とびっくり。
そして頁をめくって、思わず笑い出してしまいました(失礼!)。

だって、日頃神経症のかたから聞いているような言葉がこれでもかと並んでいるのです。
いや、悲観名人の神経症のかたも絶対にかなわないような絶望ぶり。

本の帯にある言葉がいいです。
―― 誰よりも落ち込み、誰よりも弱音を吐き、誰よりも前に進もうとしなかった人間の言葉――

フランツ・カフカは20世紀を代表する作家と言われながら、生きているときには世間から認められませんでした。病弱で、不眠症。結核で40歳のときに死にます。結婚願望はありましたが結婚できず生涯独身。長編小説は全部未完。サラリーマンでしたが、仕事がイヤでたまらなかった。

そういう人だったのだそうです。

この本は全編、カフカの愚痴。それに編者の頭木弘樹さんが注をつけていきます。
この「注」がとてもいいですね。

それにしても出てくるのは、悲観的な人にとっては共感できる言葉の数々。

「ぼくは人生に必要な能力を、なにひとつ備えておらず、ただ人間的な弱みしか持っていない」

「ちょっと散歩をしただけで、ほとんど三日間というもの、疲れのために何もできませんでした」

「ぼくはただ自分のことばかり心配していました。ありとあらゆることを心配していました。たとえば健康について。ふとしたことから消化不良、脱毛、背骨の歪みなどが気にかかります。その心配がだんだんふくれあがっていって、最後には本当の病気にかかってしまうのです」

「誰でも、ありのままの相手を愛することはできる。しかし、ありのままの相手と生活することはできない」

「今日はひどい不眠の夜でした。何度も寝返りを打ちながら、やっと最後の二時間になって、無理矢理に眠りに入りましたが、夢はとても夢とは言えず、眠りはなおさら眠りと言えないありさまでした」

「ミルクのコップを口のところに持ちあげるのさえこわくなります。そのコップが、目の前で砕け散り、破片が顔に飛んでくることも、起きないとは限らないからです」

「将来にむかって歩くことは、ぼくにはできません。将来にむかってつまづくこと、これはできます。いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです」

人の愚痴を読んでもしかたがないではないか、と思われるかもしれませんが、この本を読んでいると「自分、これほどではないよね」と思ったり、いつも同じように愚痴を言っている自分が少し客観的に見えたりするようです。

なによりも、なんだかおかしくなってくる・・。
「いや、そこまで言う?」みたいなユーモアさえ感じてしまう。

ポジティブな本を読むと、自分にとってはあまりに非現実的な考え方でかえって落ち込むという神経症のかたがいますが、この本は落ち込まない!
かえって落ち着いてくる。
だって、自分と同じだから。

そういうわけでオススメです。

元編集者として、私はこの本のアイデアは素晴らしいと思います。
ポジティブブームのなかであえてこういう本を思いついて作ったことがすごい。

それにこの表紙のイラスト、真っ黒ななかにガクッと折れちゃった人の姿・・・なぜかなぁ、笑えるんです。



プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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