飲酒のこわさ
今年の夏から秋にかけて、「飲酒喫煙年齢を18歳からに引き下げる」という自民党の特命委の提言が話題になりました。
当然のことながら、医師会や弁護士会や一般のかたの猛反対でボツになりましたが、この案を初めて聞いたときには、本当にびっくりしました。
飲酒や喫煙の健康への悪影響について、ほとんど何の配慮もないのですね。
ただただ税収をあげるためなのでしょう。
日本は外で酔っ払って歩いていても大丈夫という、飲酒者にとって天国のような国ではありますが、若い方々の話を聞くと、どうもこの頃の青少年はあまりお酒、煙草には親しまないようです。
つまり、若い人はあまりお酒を飲まなくなっている。
だからこれからの税収が不安なのでしょう。
でも、実際はお酒による税収よりも、飲酒による健康被害にかかる国の医療費負担のほうがよほど多い。
このブログでも何回も書いていますが、お酒の身体への害は深刻なものですし、依存性もかなり強い。
特に未成年は、アルコール分解酵素がまだ十分働いていないので、被害も大きくなります。
アルコールというと「肝臓に悪い」と言われますが、実は脳にとっても危ない。
過度な飲酒は脳萎縮を促進します。
そんなものを18歳から飲めるようになったら一体どうなるか、大人はきちんとそういう危険性を知っておいたほうがいいようです。
アルコールを長期間、大量に飲み続けていると栄養失調のために「コルサコフ症候群」という痴呆になる可能性があります。
意識障害、歩行障害、健忘、作話などの症状が出ます。
コルサコフまでの症状に至らなくても、長い間の飲酒習慣は脳にかなりのダメージを与え、ちょっとのことで感情的になったり、怒りっぽくなったり、やけに頑固になったり、嫉妬深くなったりということもあります。
この頃よく巷で言われている「切れるおじさん」(電車や街なかで、ほんの少しのことで切れてからむ中高年男性のこと)なども、もしかしたら長年の飲酒が背景にあるのかもしれません。
でもお酒が市販されている以上、うまくつきあっていくことも考えないといけない。
それで「適正飲酒量」という目安があります。
それによると日本人男性の適正飲酒量は一日アルコール量20g。女性はもっと少量。
実際のお酒に換算すると、ビール500ml が20g、清酒一合が22g、ワイン一杯が12gです。
お酒を愛する方々は「たったこれだけ!!」と驚かれるでしょうね。
私のような下戸にとっては、20gなんて泥酔してしまいかねない量ですが。
私も下戸ですが、以前は一週間の仕事が終わったときに、ほんの少しアルコールを飲んで(20gも飲めませんが)なんだかホッとした気分になったものです。
でも、もう今はおつきあい以外ほとんど飲みません。
飲む必要も感じない。
今思うに、あの飲酒するときのホッとした気分とか解放感って「幻想」だったように思うのです。
実際には身体はそれほど気持ちよくない。次の日にお腹をこわしたりするし。
自分の身体の感覚をしっかり感じられるようになってくると、健康な身体がほしがっているものと、依存物質とは違うということがわかるのではないかと、自分なりに思っています。
自分の五感が本当に気持ちよいと思うこと、気持ちよいと思うもの、そういうものをしっかりつかまえることができれば、何か変わってくるのではないでしょうか。
*適正飲酒量とは、その量を守っていれば(ただし週2日の休肝日を含むそうです)死亡率が低く、それを超えると死亡率が増加するという量のことです。
アルコールは60に及ぶ身体疾患と関連しており、精神神経疾患、心血管疾患、肝硬変、癌や感染症と関係しています。もちろん暴力、自殺による死亡率も高くなります。うつ病との関連も言われています。
特に女性の場合、ホルモンによる影響があって、男性より早く依存症になり、寿命も短くなります。女性の適正飲酒量は9gです。
(健康日本21 より)