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老いについて その1 エイジズム

 必要があって、中高年について、老いについて調べていました。

 日本は高齢化社会に突入しただの、年金破綻だの、下流老人だの、老人が増えることについていろいろと騒がれています。老いについては、なんとなく悲観的な論調でしか語られないところがあります。
 そしてそれを煽るような風潮があります。
 エイジズム(年齢差別)というのでしょうか。社会が暗いのは老人が多いせいみたいな・・・。

 日本人は差別に鈍感です。
 米国などは多様性をうたっているだけに、差別に対しては非常に厳しく、公人が差別的なことを口にしたら、一発退場というほど敏感です。(もちろん現実の差別は存在しますが)
 まぁ、その反動みたいな形でトランプ氏のような人が台頭するのかもしれませんが。

 その米国では、年齢差別になるのでどうやら「定年退職」というものが存在しないようなのです。
 けれど、「早期退職、優雅な老後」というのが理想なので、皆、そこそこ目途がついたら退職する、企業も年金などで優遇してそれとなく退職の方向にもっていく・・ということらしいのです。
 
 さて、日本での年齢差別的な発言は、非常に大っぴらで罪悪感ゼロですね。「老害」だとかゴミのように言われます。

 そして高齢化社会と言われる割には「老年」についての知識や研究が後手にまわっているようです。

 現代の老年学では、老年期は三期に分けられます。
 まず65歳から74歳は、young old (前期高齢期) と言われます。75歳から85歳がold old (後期高齢期)。そして85歳以上が super old (超高齢期)です。
 
 統計的に75歳までは、病気さえしなければ、知力・体力は若い時とそれほど変わらない。知力などは、若い人に比べて経験値も高いので、むしろ高い。若干衰えるのは記憶に関わるところのみだそうです。
 だから実は、健康でありさえすれば、75歳までは働きたければ、十分働ける。
 けれど75歳を過ぎると、やはり病気にかかる率が高くなるし、何よりも回復力が落ちてくる。無理ができなくなってくる。
 そして85歳以上になると、認知症の率が高くなってきます。

 私たちを脅かす「認知症」ですが、実はそれほど恐怖しなくても大丈夫。
 認知症罹患率ですが、60~69歳1.5%、70~74歳3.6%、75~79歳7.1%、80~84歳14.6%、85歳以上27.3%です。(栗田圭一他、平成19年厚生労働科学研究費補助金研究分担報告書)(他にもいろいろな統計があり、少しずつ値は違いますが、大体こんな感じです)
 確かに85歳以上は多くなりますが、老人になったら全員寝たきりになったり、徘徊したりというのは悪しき先入観ですね。
 たいていの人は、それなりに自立しているのです。

 それよりもエイジズムによって、「年金泥棒」だとか「役立たず」とか言われて、卑屈になり、老け込んでいくほうが健康にも悪いようです。
 そもそもきちんと年金納めていたのに、運用損を出したのは、老人たちの責任ではないわけです。
  あたかも若い人が老人の年金を支えているような風説を流布して老人への偏見を助長するのは、卑怯としか言えません。
 
 自分が歳をとった、老けたと思い込むことが、健康にも悪いという研究結果があります。米国の「counterclockwise」という実験です。

 1979年の実験ですが、70代後半から80代前半の老人を集め、二つのグループに分け、各々20年前の環境を再現して共同生活を1週間してもらうのです。一つのグループは「あたかも自分が20年前にいるかのように」生活し、もうひとつは「20年前のことを考えながら(過去形で語る)」生活する。
 すると二つのグループとも、身体能力、知的能力、外観が若返るけれど、特に「あたかも若いかのように」生活した人たちが著しく若返る。
 そういう実験です。

 つまり自分に対する思い込みが、いかに自分の健康や能力に影響するかということ。
  これは、何も老年のことだけではないかもしれませんね。


 
 

   次回は、どんな人がアルツハイマー病になるかという研究のお話しです。
プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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