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視野狭窄と無所住心

またまたブログの間隔が空いてしまいました。

皆様もそうだと思うのですが、今は年度末。
確定申告なども重なり、お忙しい時期だと思います。

私も何やかやと本業以外で忙しく、どうもそういう時期には目の前のこと以外のことは考えられなくなります。
こういうのを「視野狭窄」というのだなと感じました。

しかし「視野狭窄」になるのは、忙しいときだけではありません。
神経症(不安障害)真っ最中のかたは、視野狭窄になっています。
依存症のかたも、依存しているもの以外のことには目が向かなくなります。
うつ状態のときにも、悩み以外の広い世界のことは目に入りません。

つまり自分の見ている対象の外に広がる世界に気づきにくくなっています。

極端なことを言えば、春が来ようが、桜が咲こうが、そんなことは意識の外になってしまいます。
自分の悩みだけ、自分の症状だけ、自分の依存している対象だけが視界にある状態。

なるほど、こんなときのために森田療法の「無所住心」という言葉があるのだなと思いました。

森田療法の作業的な部分を見ると、何か「目の前のことに集中しろ」と言われているような感じがします。
ところがそうではないのです。

「無所住心」というのは、過集中、視野狭窄を避けるための言葉でしょう。

もちろんこれは禅の言葉ですが、森田自身は武術家でもあったので、たとえに武術の例を出しています。

不安定でいることで、四方八方に注意が行きわたる。
たとえば、スポーツをしているとき、チームプレーなどでは特にそうですが、各々の持ち場の選手は、自分のことにだけ集中しているわけにはいかない。
どこからボールがくるかわからないし、自分のチームのメンバーがどういう状態でいるかも把握しなくてはならない。
安心してボーッと立っているわけにはいかないのです。
いつでも心を四方八方に働かせなくてはならない。

それが「無所住心」の状態です。

実は実生活も、そんなものです。
自分のことばかり考えて、他のことをお留守にしていたら、周囲のいろいろなことを見逃したり、感じなかったりします。

人生がひとつのことだけをめぐって展開され、他の広い社会の動きや、本当の自分の立場なども認識できない。
無駄な時間が過ぎてゆきます。

そんなとき、私たちの心は、住処を一つに決めて、そこに安住して動こうとしない状態。
きっと、それ以外の場所はこわいという気持ちもあるのかなと思います。

心はどこにも住まない。
心はどこにも住処を定めず、自由自在に動いて流れていく。

なかなかいい言葉です。


春の樹

プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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