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事実の重み

このところ、文化が精神疾患に与える影響に興味があり、パプア・ニューギニアで文明化と精神疾患の関係を調べた本を読みました。

「狂気の起源を求めて――パプア・ニューギニア紀行」(野田正彰、中公新書)です。

そして、本筋でないところでひっかかってしまいました。

本のなかに「ここで10万人あまりの日本兵が戦死した」と書いてあったのです。

10万人?  東日本大震災の死者、行方不明者が2万人・・・それでも、ものすごい数だと思っていたのに、こんな文明の果てる土地で、なぜ日本兵が10万人も死ななくてはならなかったのだろう? (実際は12万人くらいらしいです)

私はどうも戦史とか、そういうものをなるべく見ないようにしてきた(心が痛むので)こともあり、レイテや硫黄島やガダルカナルで戦闘があったことは知っていたのですが、まさかニューギニアまで侵攻していたとは・・・。

それでこわごわネットを調べてみました。

そうしたらなんと、ニューギニアの10万人あまりの兵士の90%が戦病死。
正確に言えば、餓死と栄養失調での感染症、マラリアで死んでいるのです。

つまり国はきちんとした補給のルートも確保しないまま兵士を前線に送り出していたということです。

自国に見殺しにされたのですね、この兵士たちは。

それでは、どのくらいの戦死者が出ているのかと、また調べてみました。

正確な数はわかっていないようですが、軍人212万人、民間人50万~100万人、全部で262万~312万人が太平洋戦争で亡くなった日本人。

軍人のうち60%が戦病死(餓死)だという説もあります。

そしてその兵士たちは、侵攻した先でたくさんの現地の人々を殺しています。

それでは、第二次大戦で亡くなった人たちの総数は・・・と調べてみると、なんと、全世界で6000万人から8000万人の人々が亡くなっているのです。

世界規模の殺し合い。
人の命をなんだと思っているのでしょう。

でも、これがまぎれもない戦争の「事実」。

事実ほど重いものはない。
そしてまた、それこそがすべての基盤になるものです。

思想、信条でもなく
右でも左でもなく

ましてや煽り立てられた架空の不安でもなく
チェスのようなゲーム感覚でもない。
ただの「事実」。

「人間の根本にあるのは、生きたいという欲望だ」と森田正馬は言いました。
それも事実。

そして、他の人にも同じように「生きたい」という欲望があるはずだ、と感じるのが「共感」。

死にたくない。
親しい人に死んでほしくない。

人を殺したくはない。
親しい人に殺人者になってほしくない。

そういう根源的な思いほど強いものはなく、そこにはどんな理論も理屈もいらない。

しかし、大戦で散った兵士たちには、そんな根源的な欲求すら許されなかった。


2014年7月、戦争というものの「事実」をしっかりと心にとどめておきたいと思う、真夏の始まりです。

           蓮
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プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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