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ものを捨てる

マッサージに通ったり、美容院に通ったりしていると、担当の人といろいろなおしゃべりをして、面白い情報を聞くこともあります。

何年も前に通っていたマッサージ師のかたに、聞いた話。

彼女の義理のお父様のことです。
そのかたは俳句の先生をしていて、かなりの老齢。

彼女が感服していたのは、その義父のかたの「ものの捨て方」です。
実に潔いのだそうです。

たとえば、誰かから手紙がくる。
読んで楽しんだりしているが、そのあとすぐ捨てる。

先生なので季語のことなど調べ、講義をする。
でも少ししたらその資料は捨ててしまう。
「内容は覚えたの?」と聞くと、別に覚えていないと言う。

日常生活で必要なもの以外はさっさと捨ててしまう。
だからそのかたがお亡くなりになったときには、実に身の回りがきれいだったそうです。
ただ、彼にとって大切だったと思われる人から来た1,2通のカードだけは「これは捨てないこと」と書いてとってあったということです。

彼女は、義父が戦争に行ったことがあり、人の死を目のあたりにしたことが、こういう捨て方に影響しているのではないかとおっしゃっていました。

この話を印象深く覚えているのは、多分、私がものを捨てるのが下手な人だからでしょう。

特に、書類や本を捨てるのが苦手。
自分の記憶力に自信がないからでしょうか。

でも洋服などは、なんの未練もないので、さっさと捨てられる。

このところ、古い資料とか、昔の記録とかを一生懸命シュレッダーにかけているのですが、そんなとき、時々このエピソードを思い出します。

できたらそのかたと同じように清々しくものを捨てたいけれど、それでも捨てるのが難しいのは、なぜなのでしょう。

取り返しのつかないものなんて、実はあまりないかもしれないし、そうなったらそうなったで、あきらめはつくものです。

人が捨てられないものというのは、きっとその人があきらめていないものなのかもしれません。

時として、どう考えても絶対将来必要ないだろうと思われるものも、捨てられないかたもいます。
そういうかたは、いろいろなことをあきらめられないのでしょうね。

将来何かのきかっけでそれが必要になるときが来る。そのときに捨ててしまったことを後悔したくないと思うのかもしれません。

でも、同じ人でも、簡単に捨てられるものもある。
それは、その人の欲求がそこにはないものでしょう。

そんなことを考えてみると、どんな捨て方がいい悪いではなく、「捨てられない」ということのなかに潜む自分の欲求が見えてくるかもしれません。

そんなことを思いつつ、ものを捨てることに迷いながら、一生懸命シュレッダーしている毎日です。

          階段

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プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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