幸せなひとりぼっち

このところ「無縁社会」とか、社会的な人との関わりについて、考えることが多くなってきました。家族を持たず単身化する人たちが日本ではどんどん増え続けているそうです。

家族を持たない人が増え続けると同時に、日本では家族を持たないことがイコール社会との関わりを持たないことになってしまう傾向があるようです。
その原因としては、日本はOECD加盟国(つまり工業化された国)のなかで、「家族以外と交流を持たない人が多い」「社会活動への参加数が非常に少ない」「無償の社会活動、ボランティア活動への参加が非常に少ない」のだそうです。(宮本みち子放送大学教授の記事より)

それで家族がおらず、仕事がなかったりすると、もう「無縁の単身者」になってしまう。

そんなことを考えているとき、友人から「気分転換にこんな本も面白いよ」と教えてもらったのが、たかのてるこさんの旅行記。(「ガンジス川でバタフライ」等)
このかたの本は軽く読めるのですが、そこでびっくりしたのが、彼女の人とのふれあい方。
世界各国で、文字通り相手の懐に入ってしまう。そして相手も、快く彼女を自分たちの家庭に迎え入れる。

これはなんだろう?
彼女の人柄なのか、あるいは相手の懐の広さなのか。
都市化されていない世界の片隅では、貧しいけれど、まだ人がこんなにも愛情に溢れていて温かいのだろうか。
現代日本とのギャップを、また考えてしまいました。

そしてたまたま、あるかたから二本の映画のことを教えてもらいました。
スェーデン映画「幸せなひとりぼっち」と、英国映画「ミス・シェパードをお手本に」です。二つとも単身高齢者がテーマ。

「ミス・シェパード」のほうは、見に行くことはできませんでしたが、「幸せなひとりぼっち」を見てきました。

とある団地(同じ家が立ち並ぶ区域)に住むオーヴェというおじいさんは(と言ってもまだ59歳)ある日突然43年勤めた会社をクビになります。
二年前に妻を亡くしているオーヴェは、妻のあとを追おうとしますが、隣に越してきたパルヴァネというイラン人の女性の家族がなにかとうるさくて、おちおち自殺もできない。
オーヴェは、秩序好きで、団地の管理が気になる口うるさい老人。
それまでは近所からも煙たがられていたのですが、パルヴァネはそんな彼をおかまいなく、家族の世話に巻き込んでしまう。
怒りながらつきあっていたオーヴェも、だんだんと近所の人たちに心を開いてゆく・・というストーリーです。

ストーリーだけ読むと、定石通りだし、何が面白いの? と言われそうですが、これがオーヴェの過去や奥さんとの恋愛の話なども織り交ぜ、結構引き込まれるのです。

この映画の宣伝文句を見ると「スェーデンで5人に1人が見た」とか「米国で公開された外国映画で動員一位」とうたってあります。

これだけの人たちが、この映画に魅力を感じるということは、私が今「日本の問題」として考えている「人ととの関わりの薄さ」というものは、もしかしたら先進国(と言われる国々)のなかで、皆が薄々感じていることなのかもしれない。
そんなふうにも思いました。

この映画にはひとつキーポイントがあります。
それはパルヴァネがイランからの難民であること。(ムスリムではないようです)

彼女が持ち込んできた人と人との距離感は、きっと団地にいた人たちのものとは違うはずです。
人との距離がすごく近いし、無遠慮でおせっかい。
これは私の乏しい経験から推測するイスラム圏の人たちの特徴です。

そういう人でなければ、気難しいオーヴェとは関われない。
これは、異文化とのふれあいが隠れたテーマでもある映画なのですね。

たかのてるこさんの本がこれだけのベストセラーになったり、このような映画が人気になったり・・・行きつくところまで行ってしまった先進国は、自分たちがとうに失ってしまった温かさや家族の愛情を、異文化のなかに求めているのかもしれません。

本当に、私たちは何を失ってしまったのでしょうね。





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微縁社会

インターネットで映画の予告編とあらすじをみました。面白そうな映画ですね。ネットで動画配信されたら観たいと思いますので、見たい映画リストにメモしておきました。
また、英国映画は、題名が「ミス・シェパードを見習って」ではなく、「ミス・シェパードをお手本に」でした。(どうでもいいことですが、気になりましたので)
「無縁社会」については、もうボチボチなにか対策を実施する時期にきていると考えます。実験的に実施している対策例を、NHKスペシャルかなにかで放送してもらうといいのですが、・・・。
私は、気功、太極拳、ヨガ、ストレッチ、健康体操、瞑想、ひとりぼっちの料理教室などを取り入れた生涯学習活動を中心に、「微縁社会」になればいいと思っています。

Re: 微縁社会

SUGI様 コメントありがとうございます。無縁でなくて微縁ですか。そういう生涯学習活動をしていらっしゃるのですね。今の時代はいろいろなことにチャレンジできる時代ですものね。そういう点では、昔よりずっと恵まれていますね。

しあわせな・・

お久しぶりです。
今年もよろしくお願いします。
「幸せなひとりぼっち」読ませていただきました。
私達は何を失ったのでしょう?
沢山の物、人を失ってきました。
これも時代の流れでしょうか?
人間関係がうすくなってきたように感じます。

Re: しあわせな・・

よっこ様 コメントありがとうございます。こちらこそよろしくお願いいたします。本当になぜ人間関係が薄くなってしまったのでしょうね? 原因は特定できないと思いますけれど、本当は皆、心の底では温かさを求めているはずですよね。
プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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