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本を読む

対人的な悩みを抱えていらっしゃったかたの話です。
そのかたは、職場の対人関係でいつも気が休まらない。自分が不愛想で皆にいやがられている。
そう思い込んで悩んでいました。

彼は、森田療法の本を読んだり、グループに通ったりしながら、試行錯誤していました。
そして、ある回のカウンセリングの時にこんな話をされたのです。

「ある日ふと、なんでこんなことを気にしていたのだろうと、憑き物が落ちたような感じになりました。自分の悩みはたいしたことではなかったのだと・・」

どうして急にそんな心境になったのでしょう?と尋ねると、彼が言うには「最近、とにかく手当たり次第本を読んでいたんです。森田療法の本だけではなく、AC関係の本、心理の本、人生論、成功哲学、とにかくいろいろ読んでいるうちに、ふとそんな心境になりました。」

なるほど、と思いました。
このかたは、読書家でいらっしゃいます。
読書体験が、心境の大きな変化をもたらすことは、大いにありそうなことです。

森田療法が実体験を重んじると言っても、人が体験できることはかなり限定されています。
狭い自分の体験からあれこれ考えても、なかなか悩みから脱することができないというかたは多いと思います。
森田の時代は入院療法で、直接指導が受けられたわけですが、今はそんな時代ではありません。

しかし読書するということは、ある意味、他人の経験や言葉から無限に学ぶことのできるチャンスです。

神経症に悩んでいても、森田療法の本すら読まないかたもいます。
もちろん、難しい原典を読もうと言っているわけではなく、現代はいくらでも解説書が出ているわけですから、それを読めばいいと思うのですが、なかなか本に取り組めないかたが多いようです。

本を読むという習慣は、大切なものです。
電子書籍でもオーディオブックでもいい。
とにかく、本を読んでみる。
そうすると、自分の頭の中だけの思考が外に開けてきます。

習慣にしていくと、だんだん読む速度が速くなっていきます。
そして、なるべくたくさんの雑多な種類の本を読む。

そうすれば、ひとつの考え方に固執することも免れますし、探していれば、本当に共感できる本にも出合えます。

森田療法が好きだからと、森田療法の本ばかり読んでいるかたもいらっしゃるようです。
しかしそれよりは、少し毛色の違う心理療法系の本とか、ハウツー本とかでも読んでみると、森田療法の言っていることが、違う角度からはっきりわかったりするのです。
意外なことですが、そういう体験を語られるかたに何人もお会いしました。

悩みの解決よりも何よりも、読書は自分が体験したことのない世界を目の前に展開してくれます。
良書は私たちの経験の幅を広げてくれる。
そういう疑似体験ができるのです。

コロナ巣ごもりの時期、ぜひ自分の読みやすい本から、何冊も読破するつもりで取り組んでみるのはいかがでしょうか。




お勧め本です。
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はじめて投稿しますただよしと申します。
私は、30年以上強迫神経症に悩んでいますが、最近ある本を読んで少し楽になれたように感じています。本の内容は、マルクスの「資本論」に関することで唯物論・観念論の項を読んでからです。私の強迫観念・行為の原因の一つには、観念論の考えでその考えに沿ってマイナスの感情が生じ、その感情にとらわれて強迫行為や予期不安を生じさせていたことに気づいたからです。勿論これにより完治できるわけではありませんが、以前より現実的に科学的根拠に基づいて(唯物論)考える意識が高まったように思います。もともと現代社会の構造や歴史をよりよく知る為に読もうと思ったはずが、思わぬ効果を得られました。また様々な世界観が得られました。斎藤先生の「自分のために生きていける」ということも大好きな本です。

読書は、得意ではないですが…。

 こんにちは
だいぶ、ご無沙汰してました。

 私は、正直、本を読むのは、苦手でして。知らない事も多いのですが、実体験だけでなく、本を読む事も、悩みを解決する一助に、なり得るのですね。

 読んだ本も、付せんつけたり、マーカー引いたりしてますが、時間経つと、忘れてしまう事も多くて。
辛い時は、必死に読むのですが、忙しかったり、逆に、落ち込みがひどい時は、読んでも、入ってこないです。
 でも、たまに、思い出して、開くと、新たな気付きも、あったりします。
 つい、心理系の本ばかり読みますが、(それも、悪いとは思わないですが)違う本も、読んでみても、良いかもですね。

Re: タイトルなし

ただよし様 コメントありがとうございます。マルクスの唯物論、観念論ですか! すごいですね。私は読んだことはありませんが、確かに強迫神経症の構造を理解する助けになるのかもしれません。本当に読書は様々な方向から様々な世界観を教えてくれますね。返信遅くなり失礼しました。

Re: 読書は、得意ではないですが…。

みかん様 コメントありがとうございます。たしかに本は読んでも入ってこなかったり、忘れてしまったりしますね。忘れていてももう一度読み返して気づくことができればいいかしらと思います。私は人の伝記など読んだりしますが、面白くて学びもあります。
返信遅くて申し訳ありませんでした。
プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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