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人生を保留にしない

カウンセリングにいらっしゃるかたのなかには、神経症、あるいはほかの悩みとずっと格闘していて、現実生活が何も前に進んでいない人がいます。

症状が治ってから、きちんとした仕事に就こう、と思ったり。
仕事は何とかこなしている。でも形だけ。
新しい資格やポジションに挑戦するのは、治ってからにしよう。

結婚をしたいけれど、まだ自信がない。
悩みが軽くなって、自分に自信がついてからにしよう。

悩みが理由ではなくても、こんな例もあります。
資格試験に挑戦したいけれど、あと何年か勉強してからにしよう。
「悪い点数は見たくない。完全に受かる自信がついてから挑戦しよう」という心理があるので、試験やチャレンジを先延ばしするという心理です。

それだけでなく、誰にでも「先延ばし癖」というものがあります。
掃除をしなくてはならないけれど、面倒だから明日にしよう。
これを片付けなくてはならないけれど、時間がかかりそうだから、また今度にしよう。

これはある意味、「イヤな感じ」「面倒そうなこと」に直面しないための心のやりくりです。
実際にとりかかって、やってみれば意外に簡単にできたりします。

この「先延ばし癖」と神経症の「症状」とは、共通点があるような気もします。
それはまた考察することにして・・・。

とにかく何でも「保留」にしたがる癖が人間にはあるようです。
特に神経症の場合、闘って治そうとしている限り治りませんから、何年も時間がたってしまいます。
人生を保留にしたまま何年も・・・。
実際、10年、20年症状のために同じところにとどまっているという方もいます。
オソロシイことです。

森田療法の考え方は「何があっても人生を保留にしない」ということです。
病床で熱のあるときも、看護の人に本を音読してもらったという森田正馬のエピソードがあります。
彼はこういう行動で、「どんな状態、状況でも、できることがあればそれをする」という姿勢を示したかったのだと思います。

そんな考え方があるからこそ、森田療法は障がいのある人、慢性病のある人、難病の人の生き方の指針になっているのだと思います。

そうやってほんの少しのことでも、今できること、やりたいことを前に進めていく。
そうするとその人が、生き生きしてきます。
自分の人生を前に進める行動が、その人の「生きたい」という意欲を引き出し、自然治癒力を高めていくのです。

もちろん神経症の症状も同じことです。
この苦しさを消してからではない。
苦しさを消すために人生を保留にしていたら、あっという間に時間が尽きてしまいます。

やりたいことは今やる。
そして現実に起きてくることを受け止め、取り組んでいくことによって、私たちはだんだん「生きている実感」を得て、自分が歩みたかった人生の軌道に戻っていくことができるのです。

なつのはな

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プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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