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ドストエフスキーについて


さて、ドストエフスキーについて書くと言いながら、また時間がたってしまいました。
いざ書こうとしてみると、何週間もかけて書くような実のあることでもなく・・・


私は一時、高校から大学入学時ぐらいのときに、ドストエフスキーの小説を夢中で読んでいました。
そのときは、クリスチャンスクールだったのでキリスト教というものが身近にあったことも影響しているかもしれません。
ドストエフスキーのテーマはキリストですものね。

また、ドストエフスキーのあの「カーニバル性」と言われるような、なんだかいつも「お祭り騒ぎ」みたいな雰囲気も、あの頃は新鮮に感じられたのかもしれません。

それに若かったので、長編を読むのも軽々とできました。(今は違う・・・)

で、最後に読んだのが「カラマーゾフの兄弟」だったと思います。

その頃はもう、夢中のあまり、ロシア語を勉強しておりました。あのロシア文学研究の大家、江川卓先生に習ったこともあります。
ロシア語は全部忘れましたが・・・。

で、あるとき、ふと思ったのです。
聖書が理解できて、ロシアの事情が理解できて、彼の置かれた背景が理解できると、なんだかドストエフスキーって、論理的に読み解けてしまう。

あ、もちろん若気の至りの思い込みでしたが、「謎解きカラマーゾフの兄弟」(江川卓・著)を読んで、ドストエフスキーって小説をすごく論理で書いている人なんだ、と思ってしまったのです。
もちろん、この「謎解き」シリーズはものすごく面白い本でしたが。

そして、もっと詩的なものがほしい・・・という感覚で、ポーやフォークナーなど、アメリカン・ゴシックのほうに惹かれて行ったのです。

しかし、やはりドストエフスキーは、人間にとっての根源的な問いを、いつも私たちに提示してくる作家のようです。


「カラマーゾフの兄弟」は、ご存じのとおり、「父親殺し」がテーマ。
フロイトがこれを取り上げて論文を書いていますね。


前回書いたテレビドラマの「カラマーゾフの兄弟」では、殺される父親役の人が実に名演で、「これじゃ、そのうち誰かに殺されるわ」という悪逆非道の父親を演じていました。


ところが、このカラマーゾフの父親は、なんと、ドストエフスキーの父がモデルなんですね。


ドストエフスキーの父は医師でしたが、地方に領地を買い、農奴を所有し、医師を引退してその土地に住むことになりました。
ところが、彼は吝嗇で、狭量、残酷な人間で、農奴をいじめ抜き、土地の女性には手をつけ、悪行を繰り返していたのです。
ついに農民たちは、団結し、彼を惨殺してしまうのです。

それがドストエフスキー18歳のとき。
彼は寄宿舎に入っていましたが、その知らせを聞いて、初めてのてんかん発作を起こします。


ドストエフスキーの「てんかん発作」は有名です。
彼はこのあと、度々てんかん発作を起こしますが、そのたびに奇妙な恍惚感を体験するのです。


さて、ドストエフスキーは、16歳のときに母を亡くし、18歳で父を亡くします。
母はとても優しい人で、過剰に厳格な父から子どもたちを守っていました。

ところが、母が死んだ時ドストエフスキーは発作を起こさない。
父の死の知らせを聞いて、初めててんかん発作を起こす。

ということは、彼にとって「父の死」は、それほど衝撃だったわけです。


なぜでしょうか。それもひとつの謎解きです。

そのひとつの答えは、彼自身も、父を嫌悪し、殺害したいほどのものを自分のうちに持っていた。
ところが、その願望が成就してしまったのです。

息子として感じる罪悪感は並大抵のものではなかったのでしょう。


「カラマーゾフの兄弟」のなかでは、イワンがそうです。

彼は自分の思想をスメルジャコフに語り、スメルジャコフはそれを実行に移してしまいます。
そして物語のなかで、イワンは発狂していきます。


ドストエフスキーの人生はその後も波瀾万丈。


小説家として劇的デビューを果たしたと思ったら、革命組織に関わって銃殺刑直前まで行ったところで釈放され、シベリア送り。
そこで聖書を読み耽り、刑期を終えてまた文壇にカムバック。

しかし、女性との恋も多く、のぼせ上がって追いかけて、また次の人にのぼせ上がるという繰り返し。

おまけに浪費家で、賭博癖があったことでも有名です。
今で言うギャンブル依存症ですね。
だからいつも貧しくて、締め切りに追われながら文章を書いていたのです。

ACなどという表現も軽く感じるほどの人生でした。


しかし最後の作品「カラマーゾフの兄弟」で取り上げたのが父親殺し。

彼の中で、悪逆非道の父親の死は、最後の作品に登場するほど大きなものになっていたのですね。


その人の人生の一コマが、その人にとってどんな痕跡を残すかは、一般化はできません。


ドストエフスキーは、しかし、自分の波乱の人生を、とらえ返し、深め、普遍的なものへと昇華していった人なのでしょう。


苦悩を作品へと昇華できるのは、一部の才能のある人だけなのかもしれませんが、苦悩がその人自身に深みを与え、人生に奥行きを与えていくということだけは、確かなようです。

      
       


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                                         湯島の青梅
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プロフィール

Author:岩田 真理
心理セラピストをしています。臨床心理士。
昔は編集者をしていました。

森田療法が専門ですが、ACや親との問題は体験的に深いところで理解できます。
心のことだけでなく、文化、社会、マニアックな話題など、いろいろなことに興味があります。

もしも私のカウンセリングをご希望でしたら、下のアドレスにメールをください。
info@ochanomizu-room.jp

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